倒産列伝001~不可解な手形①

倒産列伝

 ある日、ベテラン営業マンのAさんが私のところへ相談にやってきました。「新規開設で推したい先があるので事前に診てほしい」とのこと。早速、商業登記と信用調査書を確認したところ大きな問題はなし、元々ベテラン営業マンのAさん、私をわざと嵌めるずるいところはあったのでよくケンカをしましたが、相手先の定性評価については経験豊かな点で観察眼は間違いなく、確かに信頼できる営業マンではありました。

 Aさんによると「まじめで誠実な社長さん、業界経験も10年以上で、このまま会社が成長してもらえると上顧客になるのは間違いなし!!」とのアピールでした。ただ信用調査に決算書が無かったので私の表情を察したのか、Aさんは数日後すぐに決算書を過去3期分をもらってきてくれました。

 早い対応に「Aさん、さすがだな」「社長さんも確かにまじめで誠実だ」と思いつつ目を通したところ、借入は少ないものの自己資本は新興の中小企業特有の過少(むしろ債務超過じゃないだけ立派な印象)状態。地元の銀行に信用され融資が得られるまでは、ある程度こちらでも取引価格は下げられないけれど、実力を見定めて場合によっては支払条件の融通や毎期決算状況のモニタリングなど行い、的確な助言などを行って成長のお手伝いをするのが良いのだろうなぁ、と思っていたところ「あれ?」「支払手形がやけに高額だ・・」そして過去3期分遡って確認しても、ほぼ金額が変わらず3期とも絶えず載っかっている。

 「これはいったい誰に振り出した手形なのだろう?」(②につづく)