倒産列伝

倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑧

 バブルの清算期になっても、あの頃の金融機関にとって融資先を与信するには不動産しかなかったのだと思います。他に何を信じていいものやら・・・と言う、あの時代において社会からバブル崩壊を引き起こした加害者としてレッテルを張られ、与信の専門家と...
倒産列伝

倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑦

 まず最初に示した資料は、これまでのH社の業績の推移グラフでした。  Oさんは代表者ですから、当然にこのグラフの動きの事実根拠を説明できるはずです。頂いた決算資料で一番古いものが過去最高売上、最高益ともいえる実績を計上された...
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倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑥

 ただっ広い空間に常務と私、向かい合ってオーナーに加え、秘書の男性が座りました。秘書の方は私の持参した資料一式を受け取り、全員に配りました。  オーナーにお見せする資料については、事前に秘書室責任者のスクリーニングを受けてい...
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倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑤

 アイボリー色の領域に辿り着くと、待合用のベンチも高級品に変わりました。  空間のど真ん中に大きく白いテーブルが置いてあるかと思っていたのですが、それはオーナーが当時、建設を夢とされていた海外のカジノ施設の完成模型でありまし...
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倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ④

いよいよオーナーのオフィスへ向かいます。電車を降りて改札を出ると、すぐに地下道となっており地下鉄と駅前のテナントビル群が直結しています。私はキョロキョロしながら、それを進んでいくと昼時のためか、ひしめく食堂の前にサラリーマンたちがなじみの店前に並んで待っています。
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倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ③

「今のうちに言っておくけど、この事は絶対に誰にも話さない事!!、いいか?グループ全体の士気やモラルにも関わってくる事だから、何につけても特命として秘密裏に動く事。ここにいる者には常に報告を行い、ここにいない役員でも基本的に君らから話すことは許さない。一度私に必ず確認する様に。」
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倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ②

 H社と言えば、木馬業界の中では老舗中の老舗でしたが、遊園地や最近では繁華街の観光スポットなどに建設される大型のジェットコースターや観覧車の製造は生業としていなかったので、会社規模で言うと中堅といえる企業でした。  しかし聞...
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倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ①

 「オーナー! これ以上は限界です!!」  上擦った声で必死に諫言を投げかける会長。  彼はそれを全く無視し、私の提出した書類に目を通しています。  「これ以上は、もう続けるわけにはいかないです!」  会長に続き、...
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倒産列伝015~おれもわからん!! 会社更生⑳

 A社は会社更生を申立てた後、分割を繰り返し、A社の遺伝子を引継いだその承継会社や分割会社もまた分割したりで、店舗以外の企業部分は自己破産したりで消滅していきました。  会社分割は企業再生を実現するうえで、経営する側や再生の...
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倒産列伝015~おれもわからん!! 会社更生⑲

業界で初めて、企業倒産の法律で最強といわれる会社更生法が適用されたことは良かったのですが、更生計画が無事に成立するまで2年以上かかっていました。これでも旧来の会社更生等の倒産法よりは改正され劇的に早くなったのではないかと思うのですが、それより早い速度で生き死にを掛けている連中にとっては、止まった世界だったのです。