倒産列伝

倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑬

 寒い季節が終わり徐々に暖かい南向きの風が吹くようになり、海外からやって来たと思しきタンカーらが行き来する摩天楼の谷間の運河にも、ユラユラと蜃気楼の様な空気の揺らぎを感じる様になりました。  資金繰支援地獄も、始めてからもう...
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倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑫

支店長:「当行としましてはH社への資金繰向けの当座貸しに十分な保全がなくて・・・。」私:「成果物を譲渡担保として押さえているという事ですか?でも登記されていませんよね?」
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倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑪

   両脇に立つ背の高く若い門番の男二人は、聞けばバレーボール選手との事でした。いわゆる実業団(社会人)選手とのことです。その二人をボディーガードとして従え、小柄な中年の男が私を(正確には私とO氏を)エスコートし、プレハブの行内カウ...
倒産列伝

倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑩

オーナーのS氏は少し強い口調で、私をご自身の隣に置いたオットマンに座らせると常務に「続けて」と更なる説明を求めました。
倒産列伝

倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑨

 話の成り行きを伺ううち、後向きなコスト削減でしか再建案を見出せないメインバンク側の指導法に付き合わされたO氏は、いよいよ資金繰が逼迫してきたという話をし始めました。 この部分に至るまで長く寄り道して話を聞き、それを頭の中で...
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倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑧

 バブルの清算期になっても、あの頃の金融機関にとって融資先を与信するには不動産しかなかったのだと思います。他に何を信じていいものやら・・・と言う、あの時代において社会からバブル崩壊を引き起こした加害者としてレッテルを張られ、与信の専門家と...
倒産列伝

倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑦

 まず最初に示した資料は、これまでのH社の業績の推移グラフでした。  Oさんは代表者ですから、当然にこのグラフの動きの事実根拠を説明できるはずです。頂いた決算資料で一番古いものが過去最高売上、最高益ともいえる実績を計上された...
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倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑥

 ただっ広い空間に常務と私、向かい合ってオーナーに加え、秘書の男性が座りました。秘書の方は私の持参した資料一式を受け取り、全員に配りました。  オーナーにお見せする資料については、事前に秘書室責任者のスクリーニングを受けてい...
倒産列伝

倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ⑤

 アイボリー色の領域に辿り着くと、待合用のベンチも高級品に変わりました。  空間のど真ん中に大きく白いテーブルが置いてあるかと思っていたのですが、それはオーナーが当時、建設を夢とされていた海外のカジノ施設の完成模型でありまし...
倒産列伝

倒産列伝016~馬を買ったと思えばいいよ④

いよいよオーナーのオフィスへ向かいます。電車を降りて改札を出ると、すぐに地下道となっており地下鉄と駅前のテナントビル群が直結しています。私はキョロキョロしながら、それを進んでいくと昼時のためか、ひしめく食堂の前にサラリーマンたちがなじみの店前に並んで待っています。