これは、それよりもっと前にあった別の事です。当時の私の上司で士業の免許を持ち専門は経営企画系の方だった人がいるのですが、会社から不振企業の事業立直しのミッションを与えられ出向する事になった際、私は事前情報として「反社会的勢力と言われる連中が関わっている噂がある」という事をお伝えしたのですが「どうせチンピラだろ?」と強気な発言をされ「だいいち噂の範囲を出ないし、存在も明らかでない」「問題あれば警察呼ぶさ」とばかりに私の忠告には意に介さずという態度で向かわれました。
その後、その会社はあえなく巨額負債による破産を申立てました。当然当社は貸倒を負ってしまい上司は立て直し失敗という事で帰任を命ぜられ、その際、私に一枚の名刺を見せて下さいました。「こういうのが社内を闊歩していた」というのです。見るとその名刺には、有名な広域反社組織のエンブレムの横にコンサル業と名乗る法人名が記されたものでした。
明らかにあの会社は乗っ取られていたと思われ、上司に「会社に報告したのですか?」と意見しましたら「いや、逆に上からの命令であの会社を助けろっていう事だったから仕方ないじゃない」と言い出して「自分に責任はない」と言わんばかりでした。「でも出向前に具申する方法もあったろうに」「ひょっとして上層も知っていたのかな?」と私自身モヤモヤと自分の会社を疑う様になってしまいました。
あのとき、この上司が毅然と会社にこの事を報告したり、私の話を信用して彼らと接触する前にフェードアウト方式で関りを断つ方法を選んでいたら・・・、多少めんどくさい作業になったかもしれませんが貸倒は回避され、噂だけで社会的信用を落とさずに済んだかもしれません。
引き換えに上司はこの世から居なくなっていたかも知れません。実際にこの会社と取引をしていた某上場企業の社長が突然亡くなり、警察もそれを自殺と認定した事件がありました。亡くなった理由や自殺となればその動機はいずれもわからずモヤモヤ・・・「もしその社長が正義のために動いた結果だったら、自殺とされるのは全くの犬死だ」・・・思い描くのは最悪の事ばかり。誰が敵で誰が味方か周辺すべてに不信感が募る様になりました。でも上司は、彼らの存在をわが目で確かめ、そして「関わったら、いろいろ面倒な事になる」という貴重な経験を積まれたので、二度と強気な言葉で私の諫言を無視しなくなり必ず確認してくれる様になりました。
さて、話を戻しますと「“悪の忍び寄り”を感知した場合、エビデンスにこだわる味方をどう説得するか?が与信管理実務者の課題かな?」と思われます。悪事の履歴や関わって被害を被る確証はなくても、警察が後々「相手が反社と知りながら関わった企業は名前を公表する」なんて厳しいルールが設けられた事は反社チェックを勉強しているものなら皆知っている話なので、無視はできなくなると考えるからでした。
そこで“業界?”に詳しい探偵に来てもらい、まず実在性を確認してもらう事にしたのでした。
私 :「ネットで検索しても出てこないのは何故なんでしょう?」
探偵:「あ、この人SEO対策してますね」
私 :「SEO対策?」
探偵:「うーん、ネット検索しても自分の名前がヒットしにくくする逆SEO対策でしょうね。そういう専門家にルートが無いとできないことでしょうね」
ネット環境で検索のテクニックは徐々に高度化し浸透していた時代ですが、その道で逆作用を狙った対策を既に行っているというのは、反社チェックの制度が始まったばかりの時代としては新進で、そら恐ろしい連中だな?と思わせるものでした。
数週間して「素性がわかりました」との報告がありました・・・。(③につづく)