倒産列伝008~お色気与信に逆切れおじさん④

倒産列伝

 年金も払ってないなんて・・・。

 最近の年金事務所は、バブルの煽りや社会問題となった回収のやりすぎで破綻した消費者金融の債権回収専門職を採用しているとの噂で、結構厳しくプレッシャーをかけてくるらしく従業員達は、自分の会社が払ってないなんて思ってもいなかったので、動揺が社内で本格的に蔓延し始めたのでした。

 こりゃ末期だな・・・。

 私は、その10年近く前に、一度破産を申立てながら反社に捕まり、取り下げさせられてその後行方不明になった会社の社長が、従業員の家族の分も含む社会保険料を半年も払っておらず、直接従業員達に督促状が送られたのを見たのですが、彼らは支払ったはずの600名に及ぶ将来ある若者の年金やその子供達も含む医療保険などを滞納し、自分はベンツのトランクに現ナマの札束を放込み逃げたというエピソードを思い出しました。

 本当に私財を投げうった上で万策尽きての理由でも許しがたいのに、社会的責任を放棄して反社には弁済し居なくなってしまうのは大きな罪、ましてや今回の様に事業そのものはうまくいっているはずなのに、この様な事態を招くのは「最悪の経営者だ」という憤りを覚えるのでした。

 雇用・納税よりも配当・・・を優先している様に思える。

 自分の事しか考えられなくなっているのだろうか・・・。

 そんなことより当社も早く回収しないと・・・、そういう多くを犠牲にしている経営者に同情なんてしていられない。

私 :「とにかく、従業員の方々から“おじさん”に連絡を取ってもらうようお願いしましょう。」「そして我々からも、何度でもいいので携帯電話にコールしましょう。」

 しかしながら、ぜんぜん打っても響かぬというのはこう言うことでしょうか?何度コールしても、メッセージを残してもうんともすんとも言わない。

 居場所も分からず、返事もなく、お金を払わない、これに費やした関係者の労力の事など考えたことあるのかな?

私 :「しょうがないですね。後日、裁判所や他の債権者に文句言われる可能性が高いけど、彼を引っ張り出すのに最善な策を使いましょう。」

役員:「なに?それ」

私 :専務さん達に協力してもらって、こんな感じで行きましょう。

 専務さんからおじさんに、当社がGPS機材の在庫品を仮差押さえすると言っている。

 または当社で一方的に買取って債権と相殺して余剰を払ってあげると言ってる。

 従業員一同もこれに賛同していて、これ以上の給与遅配や他の債権者から面倒を起こされたくないので、紳士な当社からの入金を退職金代わりにして、みんな辞める。

 と伝えてもらう。

役員:「それ、やってみるしかないね。」

私 :「緊急避難としてやむを得ないですよ。」

(⑤へつづく)