この会社に対して十分に評価し生涯付き合える相手と判断して仕事を投げているわけではない?
私は違和感を覚えましたが、彼らは身内(会社の同僚)なので、ここはいったん話を聞いてみようと思いました。
私 :「先方の財務面など体力の話などはされていますかね?」
D :「いいえまったく・・・そのあたりは素人なので少しもしていません。」
私 :「話してない?まぁ無理もないですね・・・。」
D :「ただただ、先方の社長より資金繰が厳しいだの、追金をもらえないと倒産するしかないだの、と求めてくるんです。」
私 :「あぁ、殺し文句ですね。悪意を感じます。」「それで、助けなくてもいいのですか?」
D :「私としては、仕事が滞るので助けるというよりも存続させたい。」「でも、彼らは噓つきなので、会社としてはもう助ける気持ちは薄れています。なのでかばうと私も会社で浮いてしまう。」
私 :「うそつき?」「うちは相応しい相手として決裁を取って仕事を投げたんですよね?」「どのくらいのお付き合いですか?」
この会社(先方)の創業来のお付き合いだという。
創業以来、仕事を投げてきた間柄なら、お互いに勝手知ったる感じなのでは?
D :「実はプライベートなことなど情報はほとんどなく、事務所も行ったことありません。」
私 :私は耳を疑い「え?いくらの仕事を投げたんでしたっけ?」
D :「計画では3年間で3億円ほどになりますか・・・?途中、途中に検収をはさみながら支払っていく形式にしてリスクヘッジ?していましたが、今のところ1億円強は支払ってしまいました。」
私 :「着手金を契約で定めたのなら、成果物が出来上がるまでの前渡金債権(返還請求権リスク)を負担するのは当たり前でしょうね、それが授信になります・・・でも、その後の追金要請が両社で示し合わせた途中の検収期日や成果物をはほぼ無視された形ですかね?」
「約定違反なら、契約で期限の利益喪失事項というものなど定めていれば、たいてい即金にて返還要請などできるのでしょうが・・・追金はどういうスキームで支払ったのですか?」
D :「最初の追金は突然の事で面食らったので、まずは支払って事後に稟議の決裁をとりました。」
私 :「緊急ならやむを得ないでしょうが、代替の効く仕事に対して説明責任も果たさずに前渡しリスクを増大させるのは、いわゆる「盗人に追銭」に近い行為になりますね。
D :「そうはいっても、実は今どき代替先を探すのは一苦労なんです。」「皆どこの開発下請けさん達は仕事がいっぱいいっぱいで・・・。」
私から、正論を指摘されてイラつき50%、わかってよっ50%の彼の言い分は理解できなくもない。
私 :「ということは彼らも、逆切れ気味に追金を求めてきているわけですね?でもコンペで最安値を提示してきたわけですから、大手の受注が欲しかったからというわけですよね?」
「あとから追金を求めてきたら結局、コンペで落選させた“腕は確かで高い先”を指名したほうが
かえって安かったかもしれない・・・という結果にもなりかねませんね。」
「これ、いわゆる、なんて言う表現になりましょうかね?」
D :「・・・・・・。」
私 :「それと、この開発会社さんは他の仕事も請け負っているという事でしょうが、具体的に情報掴んでますか?」
D :「はい、最大手レベルのプロジェクト1社が総額3~4億円、ここにも追金を求めたそうですが拒否されたとのことで、開発は中断しているとの事です。もう1社は5000万円レベル。いずれも納期は当社よりもずっと先なので、あまり焦っていない感じです。」
私 :「この会社の信用調査によれば、年商は2億程度。このプロジェクトを合計すると当社のを合わせて7億~10億程度の話を抱えている事になりますが、2~3年の工程になるとはいえそれだけの仕事を受ける人・物はそろっているのかもしれませんが、金、つまり資金がないんですね。」
私 :「他でも、授信の個別問題のケースを見ますが、年商が億足らずの中小の開発会社さんに、十数億の話を持ち掛ける大手さんの開発話を伺います。当社も持ち掛ける側の一つだと思いますが、中小企業の代表の立場になれば、千載一隅のチャンスに断りでもしたら二度と話は来ないと思うのは当たり前で、舞い上がって引受けるんですよね。そして準備のために先行投資をする必要があり、資金を銀行から引っ張ってきて、その金で物を引っ張りますが、肝心な人が集まらなかったり、大手さんからドタキャンを受けたりで窮地に立たされ、或いは夜逃げするパターンの話を見てきました。」
私 :「倒産するお金もないので、夜逃げするんですよね。近年は、クラウドファンディングで資金集めしようとしたり、再生ファンドを介して身売り先を探すのですが、過去によほどのヒットが無いとついてくれませんし、資金が集まったり、身売りできてもプレッシャーを受けたりで思う様に開発活動ができず、いろいろ無理もしますから、そこかしこにひずみが起き、結局良い物ってできないんですよね。馬車馬のように働いて必ずできるという積上げ作業ものでもありませんし・・・。そういう事例が多くなるにつれ、ファンドも銀行も相手にしなくなったり、よくよく見極めされて時間がかかったり、その結果、結局ダメになったりする様にもなってしまうんですよね。」
(③へつづく)