倒産列伝009~本当の敵③

倒産列伝

私 :「私は、仕事を持ち掛ける側の、主に大手の開発担当者は、まず仕事を請ける相手の痛みを知ることが大切なのではないかと思うのです。」

私 :「たとえば、年商2000万円の開発会社さんに10億円の仕事を投げたら“相手は喜ぶ”と思っている人は多いかの様に思います。しかし、彼ら経営者にとっては本心は“有り難くも迷惑”で、チャンスと捉えながらも、実現するためには突然に“人・物・金”の課題克服がマストとなり、その後も期待に応え納期を守れる工程管理を段取り、品質も約束するというプレッシャーを乗り越えなければならない苦労があるという事、何よりもそれを実現するためのお金の問題に理解を示すべきだと思います。」

私 :「年商2000万円の会社にとって、10億円の仕事を請けて、その10%である1億円の先行資金が必要となった場合でも、それを調達することは大変な事だと思います。そのために自身の資産を投げ売ったり、親戚を頼ったり、大事な財産を担保に差入れたりする経営者もいます。それでもダメだったから・・・覚悟を決めて我々に着手金を求めてくるはずなのですが、こちら側はその信用性を会社に証明するだけの将来性や定性情報をそろえ、財務の脆弱な点や先行資金が調達できない理由など覆す理由により会社に認めさせ、決裁をさせるべきだと思うのです。」

私 :「そして生涯“あのとき資金を出してくれたから今がある”という感謝をこちらにしてもらい(担当や責任者個人にではなく、あくまでも法人に対して)、同時に永劫に尽力してもらえる関係になっていくのが望ましいと思うし、それが業界の発展につながると思うのです。」

私 :「冒頭の“腕前が良いとは思っていない”とか、“特にどこでも良かった”、“替えはいる”とか、“会社に行ったことがない”とか、“嘘をつかれている”という言葉が出てくること自体に、私としては本当に違和感を感じるんです。」

 しまった・・・思わず偉そうに語ってしもうた。

 私としては、長年の思いをぶつけたまでだったのですが、突然の重い私の発言に彼の顔が引いているのを感じながら、講釈垂れたことを後悔しました。

 ここはフレンドリーな関係に戻さなければ・・・と思い。

私 :「こういう展開って、アドベンチャーゲームになりませんかね?」「会社経営のシミュレーションゲームのイベントとか。」「きっと面白いですよね?」

D :「おもしろくないです・・・・。」

 無表情の顔は無表情のままあっさりと一紋切りに。更なる深みにはまってしまいました(汗)。

 あ~あ、しばらく冷却期間を置こうかな~(涙)。

「突然の訪問」

 いきなり、授信管理を会社から命ぜられた上司や責任者でもないし、突発的でスポット的な課題に対して壮大な理想論をぶちまけても、そりゃ響かんわな~。それどころか、思想や目標までのプロセスも示していないのだから反感を買うわな~。

 「将来の事よりも今の事で悩んでるんだけど、それなら自分で解決するよ」ってなっちゃってしまってないかな?

 せっかくの「グループ授信管理体制」構築のチャンスを逸した気分になり、次に声がかかるのを待っていたのですが、しばらくして1ヶ月ほどのち声がかかったのでした。

D :「追加の資金は検討中として時間稼ぎをしていたのですが、いよいよ先方が訪問し状況を説明したいと言ってきました。同席してもらえませんか?うちの開発の上層は時間が無くて会えないので。」

 時間がないなんて、こんな大事な案件に忙しいからと面談できないなんてあるのかな?

 訝しく思うも、自分に出番が与えられたこと、やはり頼りにされた事がうれしくて、一つ返事で引き受けてしまいました。逆にここが私の悪い対応だったかもしれません。駆け引きをして簡単に出張らない事も選択肢だったかもです。これは、のちのち社内戦術に響いてしまいました。

 さて先方は代表ご本人と、その御曹司の専務、メイン銀行から目付け役として出向されているCFOのお三方、こちらはディレクター(D)とチーフプログラマーと私でひとつテーブルに対峙する事となりました。

(④につづく)